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『Ascending To Infinity』 - LUCA TURILLI's RHAPSODY

2012年06月22日

CDジャケット画像
  • ジャンル:シンフォニックパワーメタル
  • 国籍:イタリア
  • リリース:2012年6月22日
  • 通算:1stアルバム

 

満足度:96

このバンドは、2つの壮大なサーガの終結と共に分裂したRHAPSODY OF FIREの中心人物とも言えたLUCA TURILLIが全てをコンポーズした新たなRHAPSODYと言える。しかしこの作品はオレにとってRHAPSODYの新譜というより、LUCA TURILLIのソロ4作目という感じがしてしまう。

内容は、RHAPSODYの生命線たる劇的なオーケストレーションはそのままに、近年のRHAPSODY OF FIREの作品から失われつつあったツーバスでの疾走感とキャッチ―なメロディラインの融合が復活していて、期待通りの音楽を聴かせてくれて非常に嬉しい作品となった。

特にアルバムタイトル曲となる#2「Ascending To Infinity」では、お約束のアレンジが施されたサビのメロディラインが、高揚感が更に高まっていくような流れでこの曲名に相応しいと感動し、更にエンディングに向かうパートの限りなく劇的なメロディの展開には涙した! また#4「Excalibur」のクサいサビメロや中間の民謡調のパートを聴くと本領発揮しているなという感じで嬉しい。

そしてそのサウンドは過去のRHAPSODYLUCA TURILLIのどの作品よりもシンフォニックで映画音楽的な要素が強く現れている。これまで彼が創り上げた作品は、ファンタジー寄りのサーガに多少なりとも音楽性が縛られていたところはあったようで、今作ではイントロのお経のような声、電子的な音、効果音等を聴くと、Luca Turilliの頭の中にある理想の音世界を、思う存分具体化することができたと言えよう。

音楽的にも#5「Tormento E Passione」はクラシカルなフレーズが散りばめられる中に、Bメロは今までの作品では聴いたことの無いようなある意味ポップな感じがあり、Luca Turilliの想像力が、何の妨げもなく発揮されている印象を受ける。続く#6「Dark Fate Of Atlantis」の緻密なオーケストレーション、めくるめく展開を聴くと、Luca Turilliの作曲力そのものに全く衰えはないということを感じさせられる。

それが特に顕著なのはやはり本編ラストの大曲となる#9「Of Michael The Archangel And Lucifer's Fall」だろう。何度も聴くごとに味わいが深くなる楽曲の完成度の高さは勿論、オーケストラパートを300トラックも使用したということで、どれだけ多彩な音色を使用し、複雑な編曲を施したのだろうか?と驚くこととなった。聴いていても全く聴こえない音も多数存在しており、またそれが存在していることが、Luca Turilliが望む音の響きを得ることにつながるのだろうと考えてしまう。

他の楽曲の出来も良く、ソロ1st、2ndに続く完成度と感じたが、どうしても過去の名作のように手放しで絶賛できない感覚があった。それはそのサウンドによることが大きいと感じる。オーケストラパートのサウンドは、打ち込みながら音源の進化、打ち込み技術とそれに多大な時間をかけただけあって、生オーケストラのようにはいかないものの素晴らしい仕上がりになっている。

しかし肝心のバンドサウンドの迫力が不足しているのだ。これまでRHAPSODYLUCA TURILLIソロにおいてはオーケストレーションと刺激的なバンドサウンドが絶妙なバランスで共存していた。オーケストレーションがいくら派手でもパワフルでメタリックなディスト―ションギター、弾けるようなスネアドラム、重くアタックのはっきりしたバスドラムが聴けたものだ。しかし今作においてその刺激は減退している印象で、これが最高の興奮を得られない大きな理由ではないかと考えている。

今作より、これまでRHAPSODYLUCA TURILLIソロの全てのサウンドの鍵を握っていたSascha Peathに代わり、Sebastian Roederがエンジニアを務めたということ、コンポーザーであるLuca Turilliのサウンドの好みか、あるいは1日15時間を費やしたという打ち込み作業により本当に素晴らしいサウンドを見失ってしまったのではないか、と色々想像してしまう。

また、Alessandro Contiのヴォーカルは、Fabio Lioneと比較しても遜色ない声質、技術を持っていて、この音楽性に最も相応しいと感じるが、個人的にはOlaf Hayerのヴォーカルで、パワフルでメタリックでシンフォニックなサウンドで聴きたかったなとも思う。

ボーナストラックではHELLOWEENの、中でもクサメタル度の高い名曲March Of Timeがカヴァーされている。Luca Turilliがソロで同じHELLOWEENI'm Aliveをカヴァーした時もオーケストレーションを絡めたアレンジに興奮したが、今作も同様の興奮を味わうことができた。ただ、I'm Aliveのカヴァーの時も感じたが、後で原曲を聴くと原曲の素晴らしさとHELLOWEENというバンドが当時持っていた、楽曲だけではない演奏や全員でのアレンジを含めた音楽性の高さを改めて感じることになった。

Luca Turilliのファンとして、サウンド面以外では非常に嬉しい1枚だ!(雷X)